民主主義とは何か。民主主義は多数決だと言われるが、そこには正しい側面もあり、正しくない側面もある。民主主義には大きく分けて二つの形がある。一つはアイデンティティ・ポリティクスであり、男だとか会社員だとかいった自分たちのアイデンティティに基づいて投票するもの。これはそのアイデンティティの数が多いもの、声の大きいものが覇権を握る。もう一つは熟議民主主義であり、この形態は自分のアイデンティティを持ちつつも、対話、熟議をして投票する。そして民主主義の状態はこの間を彷徨っており、現在世界はアイデンティティ・ポリティクスに大きく傾いている。
では具体的に、アイデンティティ・ポリティクスと熟議民主主義では民主主義はどう異なってくるのか。一例をあげよう。アメリカはキリスト教国であり、多くが神が人間を作ったと信じており、進化論はそれほど優勢ではない。では科学としてどちらを教えるか。実は少数派にも関わらず、進化論なのだ。多数決であれば、神が作ったという方を教えるべきではないか。しかし神が5000年前(と言われいている)に人間を作ったとすると恐竜の化石などと整合性が取れなくなる。そういったことを複合的に考え合わせるとやはり進化論が正しい(合理的な)ようだ、ということになる。
ここで重要なことは進化論を教えようと、キリスト教徒であるというアイデンティティは諦めなくても良いということだ。民主主義はバランスをとることがとても難しいシステムだ。そして意思決定は遅い。だから民主主義は往々にして失敗する。ただ、民主主義が成功すると世界は素晴らしくなるはずだ。
